本当は心が温かくて


優しい人だって知ってるよ






この言葉は貴方にぴったりだと思ったんだ。








冷たい指先











なんだっただろう・・・。

地球(ポコペン)のどこかの国で言われている。

手が冷たい人は心が温かいのだと。

初めて冬樹殿にその話を聞いたときは、手の暖かい自分は、心が冷たいのだと、少しショックを受けた。



今日も、ドロロはクルルのラボに来ていた。

それは、もう日常的なことで。

初めて来たときは驚いていたクルルも、今では気にせずに自分の仕事をしている。

ドロロは、邪魔にならないところに座り

コンピュータに向き合っているクルルの背中を見ていた。


「クルル殿、お茶は如何でござる?」

「あぁ・・・・。」


クルルは、それだけ言って、また黙り込んだ。

彼はそんなクルルを見て、立ち上がり、ラボを後にした。

彼は、コンピュータに向かっているときは、他の事が疎かになる。

今の相槌はつまり、お茶がいるということだろう。

いらなかったら、彼は相槌すらうってくれない。

こんなことは、きっと僕にしかわからないんだ、なんて、少し考えてしまったこともある。


まぁ、そんなこと絶対言えないけどね。


そこまで考えて、ドロロは自分の顔が熱くなるのを感じた。

一体何を考えているのだ。

気がつけば、いつもクルルのことを考えてしまう。

自分でも呆れてしまうほどに。


クルル君はどうなのだろう


と、考えたこともあるけれど、ソレは考えないほうが良かったことだった。

自分の考えをかき消すように、ドロロは頭を振った。


ラボに戻ると、ちょうど区切りがついたのか、クルルは休憩していた。

お茶を持って入ってきたドロロを確認すると、自分のもとまで来るよう促した。


「はい、どうぞ。」

「どうも。」


入れてきたお茶を渡すと、そういって彼はお茶を受け取った。

その時に、かすかだが彼の指先がドロロの手に触れた。

持っている温かいお茶とは全く異なり、クルルの手は冷たかった。

その冷たさにドロロは少し驚いたが、先刻の冬樹の言葉を思い出し、すぐに納得した。


手が冷たい人は、心が温かい。


まさにその通りだ。

彼は優しい。


「・・・・・・・・・・先輩?」


不思議そうな後輩の声にドロロは我に返り

自分が彼の手を握り締めていたことに気付く。

途端に顔が熱くなり、ドロロは慌てて手を離そうとした。

だが、今度はクルルがドロロの手を握った。

驚いて彼を見ると、勝ち誇ったような笑顔を浮かべながら彼は言った。


「どうしたんすか、先輩?」

「ぇ・・・・あ、いや・・・・その・・・・・・・。」


問いただすような彼の視線に耐え切れず

ドロロは諦めたようにうなだれた。


「クルル君の指先が冷たかったから・・・・・。」


冷え性なの?そう聞いたが、彼は何も答えずに、ドロロの手をじっと見ていた。

段々恥かしくなってきて、覗き込むように彼を見ると

目が合ってすぐにクルルに言われた。


「アンタ、子供体温だなぁ・・・。」



子 供 体 温 。



ドロロの頭の中に、その単語は重く響いた。


え。ソレってつまり、僕はまだまだ子供ってコト・・・・?


ドロロが何も答えずに固まっていると、クルルがポツリと呟いた。


「俺様冷え性だから、冬場は仕事やりにくいんだよねぇ・・・。」


体温の高いドロロの手を羨ましそうにそういったから

ドロロはもう一度クルルの手を握った。

それから、まるで子供をあやすように優しくドロロは言った。


「でも・・・手の冷たい人は心が温かいのだと、冬樹殿が言っていたでござるよ・・・。」

「あぁ・・・・。地球(ポコペン)のどっかの国であったなぁ・・・。」


思い出すように、クルルはそう呟いた。

いつだったか、聞いたことがある。

地球人たちの会話の中に、「手が冷たい人は心が温かい」というのを。

その時、少しだけ自分の手を嬉しく思った。

つまり、自分は心が温かいのだ、と。

だが、自分はあくまで「嫌な奴」

心が温かい奴、だなんて思われるのも微妙で。

結局、普段通りになったわけだ。


「だから、クルル君は心が温かいんだよ。」


にっこりと、優しく笑ってドロロは言った。




そんな言葉が、一体どこから出てくるのか・・・・。

恥かしい、とか思ったりはしないのだろうか、この先輩は。

それでも、ドロロの言葉が、クルルの胸の中にコトリ、とはまった。

結局は自分は後輩だ。

いくら彼より位が高くても。

こんなにも、安心させられるようなことを言われてしまう。

だから、自分は彼が好きなのだ。

侵略者とは思えないほど、優しい心を持ったこの先輩が。

だから、安心して彼を自分のラボの中にいれ

こうして時を共にするのだろう。


「くーっくっく・・・どうだかねぇ・・・。俺様はあくまで『嫌な奴』だからねぇ・・・。」


いつもの調子で笑ってそういってやると、ドロロは困ったような顔で笑った。


「そうでござるなぁ・・・。」


でも・・・・、


「拙者にとっては、クルル殿は優しい方でござるよ。」


彼の冷たい指先を見ながら、ドロロは言った。

きっと、恥かしくて彼を見ることが出来ないから。

今の自分は、多分顔が赤いのだと思う。

自分でも、顔が熱くなっていくのがわかる。



恥かしいやらなんやらで、結局その後のことは覚えていないけれど・・・。

















貴方の手が冷たいのはね、きっと心にその温かさがいっているから。




だから、手の暖かい僕が温めるよ。







少しでも一緒にいたいから



僕は貴方の冷たい指先を温めるんだ・・・・













あとがき
→何だコレ。キャラ違う。すませ・・・・(汗
もうなんていうか、影から支えるドロロが書きたかったんです・・・


051015