しとしと

 しとしと


 雨は降り続けて


 しとしと

 しとしと


 傘を持って君の元へ















  01 相合傘














 じっと閉じていた目を開き、窓の外に視線を動かす。






「雨が降ってきたでござるな…」






 そういえば金の髪を無造作に結った彼、は何か買いに行かなければいけない物があると言って出ていった。

 荷物が多いならばついていこうか、と進言したものの、別にかまわないと軽く断られてしまった。

 彼が外出することなど珍しいから、ただ一緒にいたかっただけなのに。




 ――傘、持って…ないよね……?




 日向家の縁側にて、自分で入れたあたたかい緑茶をすすっていたドロロだが、すっと立ち上がる。

 そういえば先程からケロロやタママ、ギロロの姿も見ない。

 大方、地下の基地にでも篭っているのだろうと自己完結させ、玄関へ向かった。




「あれ、ドロロどっか行くの?」

「夏美殿。……ああ、クルル殿がまだ帰ってきてござらんからな。

 傘も持っていないようだったので迎えに行こうかと…」

「あぁ、この雨だものねー。うん、いいんじゃない?いってらっしゃい」

「うむ。では行ってくるでござる」

「気をつけてねー……まったく、あのボケガエルもあれくらい気を配れるようになったら良いのに」






 ドロロを見送りつつ、きっと叶わないであろう願望を夏美は口する。

 そして、飲み物を手に自分の部屋へと戻っていったのだった。












『本屋に行ってから電気屋に行こうと思ってんスよ。久し振りに外出もいいかと思ってねェ』




 クルルのその言葉を思い出し、ドロロは電気屋の方向に歩き始める。

 自分の健康に気を配らないクルルのことだ。おそらくずぶ濡れのまま帰ってくるつもりだろう。

 歩きながらその影を探す。彼のような明るい金髪であればすぐに見つかるだろうと思ったからだ。




「あ」




 いた。やっぱりずぶ濡れで、ぼうっと雨を降らす空を瞳に映しながら歩いてくる。




「クルル君!」





 そうやって呼んで、やっと気づいてもらって。





「はい」





 傘を、差し出した。






「……こっちでいい」





 クルルはドロロの差し出した傘を素通りして、ドロロがさしていた傘の中に入ってくる。





「かまわないっスよね?」

「……うん」







 どうしよう。






 ――嬉しい、だなんて。おかしい。










 本当なら、晴れてる日のほうが良いんだけどな、だとか、でも雨だって趣きあるし、とか。

 莫迦みたいな言い訳をずっと考えてた。









「僕、ね。ずっとクルル君とこんな風に歩いてみたかったんだ」

「へぇ?」




 ドロロがそう言うと、クルルはおかしそうに唇の端を持ち上げる。

 彼なりに喜んではいるらしい。ドロロは自分の口にした言葉に恥ずかしさを覚え、顔を伏せた。




「持ちますよ」



 俺様のが身長高いんだし、とまたにやりと笑ってクルルはドロロの手の中から傘を奪う。

 その時に触れた手が予想以上に冷たくて。




「早く帰らなきゃね」

「なんで?」

「クルル君の身体、冷えるでしょう?」

「帰ったら先輩の身体であっためてくれるんスか?」

「な…っ!!」




 顔を真っ赤に染め、目を白黒させながらドロロは焦り始める。




「お、お風呂に入ればいいでしょ!?」

「……ああ。先輩と一緒に?」

「く…クルルくんっっ!!

「冗談っスよ」






 くくく、と嫌な笑みをこぼす。




 ――うぅ…また引っ掛けられた…





 クルルの言葉遊びにはいつも引っ掛けられる。騙されたと気づくのはいつも過剰なリアクションを起こした後だ。





「ま、確かに早く帰らないと先輩も風邪引いちゃいそうだしねェ」

「え?」

「なんでもないっスよ」






 元々身体の弱かった彼だ。病弱ではなくなったとはいえ、病気に掛かるとそれが長引いてしまうという可能性もある。

 勿論、クルルは最後までドロロの身体の心配をしているような素振りは見せなかったが。

















もしかしたら続くかもしれないモノ。
ネタは有るが恥がある。
なんせ、続くのはちょっと裏…なので。
リクエストがあれば書くことにします…
実は会話の1節、菽にもらいました(笑)

051014